2008-11-01から1ヶ月間の記事一覧

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亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』についてのこの一連の文章 ──「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」── もだいぶ長くなりました。前々回に書いたように、文庫本の…

(一七)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その九

3 つづけます。亀山郁夫はNHKテキストでこう書いています。 「親父を殺したのはおまえか!」とのイワンの問いに、スメルジャコフは「殺したのはぼくじゃありません、それは、あなたがちゃんとご存知のはずです」と答えています。つまり、主犯はイワン、…

(一七)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その九

2 さて、そういうわけで、次に私が問題にするのは、同じ視点から、今度は「愛」でなく、「罪」です。『カラマーゾフの兄弟』における個々の登場人物の「罪」というのが、キリストを前にした「罪」だ、ということでしゃべります。おわかりでしょうが、これは…

(一七)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その九

1 さて、「その四」・「その六」で、私は『カラマーゾフの兄弟』におけるキリストの位置・意味を問題にしました。「その人自身、あらゆる人、あらゆるものたちのために、罪なき自己の血を捧げた」がゆえに「すべてのことに対してありとあらゆるものを赦すこ…

(一六)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その八

一連の文章のつづきは、もちろんいまも書き進めているんですが、まだ公開まで時間がかかるため、ここで合間に引用を三つ。 一つめ。 若い世代が古典に親しめるような工夫が必要だ。 今年、夏目漱石や森鴎外の小説を収めた文庫本が、現代の人気漫画家らによる…