「ベストセラー解剖学」


 しばらく前に私はこう書きました。

 さて、先月私はあるテレヴィ番組の取材を受けました。この十年間の「ベストセラー」をいろんな切り口で採りあげるという企画です。書店員の手書きPOPから生まれた「ベストセラー」ということで『白い犬とワルツを』が扱われるわけです。私はここしばらくそういった取材を基本的には断わってきていましたが、新潮社がこの九月にあの作品を絶版にするつもりだった(これは土壇場で回避されました)のを知っていたので、愛着のある作品のために何かしておこうと思ったんです。絶版の件がなければ、受けなかった。それでも、私は番組制作側に、自分が「ベストセラー」というものに否定的であること、『白い犬とワルツを』の総部数(一八八万部)をよくないと思っていることを理解してほしいといい、さらに条件をつけました。最先端=亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』も採りあげるのか、と訊ね、まず最先端=亀山郁夫自身への取材のないことを確認、さらに(数日かかって)、光文社編集部への取材のないことをも確認しました。もし、そのどちらかでもがあったら、私は取材を受けない、なぜなら「あんなでたらめなものと一緒に並びたくないから」と告げたんです。ただ、それでも「新訳ブーム」という切り口からは、最先端=亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』の書名だけは挙げざるをえないので、それは了承してほしいといわれました。


 その番組が先日(12月6日)放送されました。映像のDVDが昨日届いたので見たんですが、なんと最先端=亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』が「誤訳問題」を絡めて採りあげられており、しかも結局「現在の読者」の「好き嫌い」に還元されるような紹介になっていたんですね。

 このことについての文章 ── ちょうどいま書いているものとぴったり主題が重なるので、これから加筆します ── をもうじきUPします。

 上の番組は「ベストセラー解剖学〜「1Q84」とベストセラーの変遷〜」(WOWOW)
 http://www.wowow.co.jp/pg/detail/066364001/index.php
 再放送は12月11日(金)よる7:30
 さらに12月31日(木)午後1:40