(九)


 ヴァレリームッシュー・テスト』を紹介した後で、この数か月に私が読んでいた・再読していた本 ── ジョン・クラカワー『荒野へ』、大西巨人『未完結の問い』・『深淵』・『三位一体の神話』、カート・ヴォネガット『国のない男』など ── についての原稿が書きあげられているはずだったんですね、私の目算では。しかし、実際にある程度までのところを書くことになったのは、池谷薫蟻の兵隊』のみで、これは私の勤める書店のホームページには掲載しはしましたけれど、どうもよくない文章なんです。書き直さなくてはなりません。原因が私自身にあることはわかっています。ここで私がいおうとしているのは、その私の問題自体ではなくて、そこから派生した事実のひとつなんですが、私には文章を書くことがどんどん困難になってきているんですね。以前はすらすらと書けたものが、そうできなくなってきています。とはいえ、私は自分のいまの状態が、なるべくしてなったものだと思っています。歓迎するのではないけれど、正しいことだと思っている。むしろ、自分の「以前はすらすら書けた」を私はいままったくばからしいと思っているんです。