2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

(一〇)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その三(後)

4 「あのね、アリョーシャ、笑わないでくれよ、俺はいつだったか、そう一年くらい前に、叙事詩を一つ作ったんだよ。もし、あと十分くらい付き合ってくれるんなら、そいつを話したいんだけどな」「兄さんが叙事詩を書いたんですか?」「いや、書いたわけじゃ…

(一〇)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その三(前)

「その三」は二回に分けてUPします。 1 ここまで、亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』について ── 基本的にはアリョーシャの「あなたじゃない」を巡って、その周辺だけを、ですが ── もうだいぶしゃべってきたわけです。私がこの翻訳の「あなたじゃない」の…

(九)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その二(後)

4 さて、前回の文章を書いた後で、私は亀山郁夫の「解題」をまたぱらぱらとめくっていて、こういう記述 ── これのせいで、今回の文章がこうまで長くなってしまったんですね ── を見つけたんでした。イワンとスメルジャコフとの対面についてです。 三度目の…

(九)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その二(前)

1 あらためてお断りしておきますが、私は亀山郁夫訳『カラマーゾフの兄弟』の全体を読んでいません。それどころか、私はただこの翻訳におけるアリョーシャとイワンの会話「あなたじゃない」という第四巻中の箇所を読んでみたにすぎません。それ以前にも自分…