映画『ハンナ・アーレント』


 映画『ハンナ・アーレント』を観ました。そこでハンナ・アーレントはこういいます。

 ソクラテスプラトン以来、私たちは<思考>をこう考えます。自分自身との静かな対話だと。人間であることを拒否したアイヒマンは人間の大切な質を放棄しました。それは思考する能力です。その結果モラルまで判断不能になりました。思考ができなくなると、平凡な人間が残虐行為に走るのです。過去に例がないほど大規模な悪事をね。私は実際 ── この問題を哲学的に考えました。<思考の風>がもたらすのは、知識ではありません。善悪を区別する能力であり、美醜を見分ける力です。私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状況にあっても、考え抜くことで、破滅に至らぬよう。


 私はしばらく前に「単に読書するだけにも「勇気や信念」は必要なのだ」といいました。そうして、こういいます。「勇気や信念」を欠いた(平凡な)読者がいずれ「残虐行為に走るのです」。最先端=亀山郁夫の仕事を批判できない(平凡な)読者は、いずれ残虐行為に走ります。なぜなら、彼らには「勇気や信念」がないから。つまり、彼らには善悪が区別できないから。つまり、彼らには美醜を見分ける力がないから。つまり、彼らには「考える」ことができないから。「考える」ことを放棄した読者にだけ最先端=亀山郁夫訳は受け入れられます。「人間であること」を放棄した読者にだけ受け入れられるのです。