2009-06-01から1ヶ月間の記事一覧

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) さて、アリョーシャの手記は「地獄と地獄の火について。神秘的な考察」で終わっていました。いくつかに分割しますが、全文を引用します。 神父諸師よ、『地獄とは何か?』とわたしは考え、『もはや二度と愛することができぬという苦しみ』であると…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) しかし、先へ進みましょう。「今は亡き司祭スヒマ僧ゾシマ長老の生涯より。長老自身の言葉からアレクセイ・カラマーゾフが編纂」について、私はしゃべろうとしていたんでした。 私はここまで『カラマーゾフの兄弟』におけるイワン・カラマーゾフに…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) さて、私はこれから「今は亡き司祭スヒマ僧ゾシマ長老の生涯より。長老自身の言葉からアレクセイ・カラマーゾフが編纂」についてしゃべるつもりなんですが、その前にちょっとだけ寄り道をして、もう一度、最先端=亀山郁夫の例の文章に戻ります。 …

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) さて、「悪魔」がイワンを籠絡しようとするには、イワンの「良心」の傷口に塩を塗りこめ、苦痛をもたらすことが必要でした。「悪魔」が持ち出す論点は必ずそこに触れるものでなくてはなりません。「悪魔」が執拗に攻撃するのは、イワンの弱点に対す…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) しかし、私はまだイワンとフョードルとについてしゃべっておくべきだろうと思います。ふたりが同根の考えを持っていたとはいいましたが、補足として、たしかに同根の考えを持ってはいたにせよ、実はふたりがどう違うのかということをしゃべりたいん…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) しかし、またべつの側面から私はしゃべってみましょう。「悪魔」はイワンにこういいます。 「しかし、僕の目的は立派なものだよ。僕は君の心にほんのちっぽけな信仰の種子を一粒放りこむ、するとその種子から樫の木が育つんだ。それも並大抵の樫じ…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) しかし、手綱を緩めずに先へ進みましょう。 イワンはスメルジャコフとの三度めの対面で、フョードルを殺したのがミーチャではなく、スメルジャコフであることを知ります。 「実行した? じゃ、ほんとにお前が殺したのか?」イワンはぞっとした。 脳…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

(承前) さて、「彼(イワン)の前には誰もいません。束の間、アリョーシャやゾシマ長老が浮かび上がってはきますが、その他に彼の前に「人間の顔」を持った生身の人間の現れることがありません」といったばかりの私ですが、むろん、私はわざとカテリーナ・…

(二二)「些細なことながら、このようなニュアンスの違いの積み重ねによって読者は、少しずつ、しかし確実に原典から遠ざけられて行く。」その一三

もうずいぶん遅かったが、イワンはまだ眠れずに、考えごとをしていた。この夜、彼が床についたのは遅く、二時ごろだった。だが、今は彼の思考の流れをすべて伝えるのはやめておこう。それに、まだ彼の心に立ち入るべきときではない。いずれ彼の心を語る順番…

数日中にUPします。

ついいま、ようやく懸案の原稿を書き上げました。数日中にUPします。ただし、あまりにも長い(文庫本の字詰めでは約180ページ)ので、何回かに分割してのものになります。何回になるか、どこで分割するかということは、これから考えます。